医療従事者による記事

誰でもできる簡単かつ安心な介助技術

2020年12月26日

Brotherhood

ボディメカニクスとは・・・

介護の場面では、動けない(動きづらい)方を支える・抱える・持ち上げる等といった介助を行うことがあります。人が人を介助するにはそれなりの力を必要としますが、力任せに行うのではなく最小限の力で介助した方が、介助者も介助を受ける方も負担軽減されます。そのために必要な力学的相互関係を活用した技術のことを「ボディメカニクス」といいます。

ボディメカニクスは、「ボディ=身体」と「メカニクス=機械学」による造語であり、人間の身体が動くときの骨や関節、筋肉による作用を活かした技術をいいます。

ここから「ボディメカニクスの原則」について説明していきます。

〇支持基底面を広くする

「支持基底面」とは、人間が姿勢をとる際に支えている面積のことです。例えば、立っているときは、両足の裏が地面に接地しているかと思います。そのときに両足の爪先(つまさき)と踵(かかと)を結んでできた面を支持基底面といいます。この面の中に「重心」があり、面積が広いほど重心の移動がしやすくなります。逆に狭いと小さな面積の中で重心を保たなくてはならないので、姿勢を崩しやすくなります。

足幅を狭くして爪先で立ったら、支持基底面は両足の指だけになります。これでは、すぐにバランスを崩してしまいますよね?

介助をする際は、足幅を大きくすると支持基底面を広くとることができて、安定感が増します。

お相撲さんが踏ん張るときに足を大きく開くのが、まさに良い例です。

介助で抱えたり、持ち上げる場合は、足を大きく開いて踏ん張るようにしましょう!!

 

〇重心の位置を低くする

寝ている状態→座る姿勢に起き上がらせる、座っている姿勢→立たせる介助をするときは、膝を曲げ、腰も落とした姿勢をとり、重心を低くして行うと介助しやすくなります。

重心を低くした状態で介助する人を優しく支えると姿勢も安定し、介助を受ける方も安心感が増します。

逆に、低くかがまずに重心が高い状態で介助をすると、相手を吊り上げるようになってしまうので大きな負担が生じます。

座っている人を立たせる際などには、相手となるべく同じ高さまで重心を落として介助しましょう!!

 

〇重心移動をスムーズにする

持ち上げるより滑らせるように行う介助の方が最小限の力で介助できます。持ち上げる介助は、重力に抗さなくてはならないため、それだけ余分な力が必要となります。

よって、移動の向きを上方ではなく重力のかかりにくい横方向にスライドするように介助した方が小さな力で対象を動かすことができます。

 

〇重心を近づける

介助者と介助を受ける方が密着し、互いの重心を近付けることで安定感を確保します。これは、相手と接地している面が大きい方が、支持する面積も増大できるので、更に安定性を高まるからです。

バランスの不安定な方を介助する際には、なるべく密着するようにして介助しましょう!!

 

〇てこの原理を用いる

支点(支える部分)・力点(力を加える部分)・作用点(力が働く部分)の関係を利用することにより最小限の力で介助を行うことができます。

起き上がりや立ち上がりの介助をする際は、肘や膝を支点に定めて行うと、介助する力を発揮しやすくなります。

 

〇介助対象者の身体を小さくまとめる

介助する人の両手・両足を組んだり・縮めることで、身体がベッドや椅子に接地している面積が小さくなれば、摩擦発生も小さくとどめることができます。そうすることで、力の分散を防ぐことができるので、最小限の力で介助できます。

 

〇大きな筋肉を使う

大きな筋肉とは、胸筋や背中の筋肉、下半身(太もも)の筋肉などです。逆に小さな筋肉は、腕や手、指などですが、介助方法によって使用する筋肉は異なりますが、大きな筋肉を使ったような介助方法を習得すれば、介助者の介助負担軽減・腰痛防止にも繋がります。

 

これらの理論・技術を介護の現場に活かすことができれば、 介助を受ける方と介助する方の双方にとって安楽な介助ができます。介助をしていて腰痛が生じたことのある方は、力の使い方を再度見直す必要があるかもしれませんので、ボディメカニクスを駆使した介助をしてみましょう!!


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この記事はBrotherhoodが執筆しました。
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